【2026年版】なぜ飲食店は高くてもハラミを使い続け…

2026.07.01

ラクシーレ

【2026年版】なぜ飲食店は高くてもハラミを使い続けるのか?牛肉仕入れのリアルな判断基準

「もっと安いハラミはありませんか?」

精肉卸として飲食店様と商談をしていると、この質問を受ける機会は少なくありません。

実際、ここ数年でハラミや牛タンの価格は大きく上昇しました。飲食店経営では原価率との戦いが続くため、「少しでも安い仕入れ先を探したい」と考えるのは当然です。

しかし、実際に繁盛店の料理長へインタビューを行うと、返ってきた答えは少し意外なものでした。

「安ければいいわけではない。」

むしろ、価格だけを見て仕入れ先を変えた結果、お客様の満足度が下がり、結局元の商品へ戻したというケースも少なくありません。

この記事では、実際に月間数百万円規模で牛肉を仕入れる飲食店へのインタビューをもとに、

 ・なぜ高くてもハラミを使い続けるのか
 ・良い精肉卸は何が違うのか
 ・飲食店は価格以外に何を見ているのか

について、現場の一次情報を交えながら解説します。

牛肉仕入れは「安ければいい」ではない

牛肉の仕入れというと、「1kgいくらなのか」という価格だけが注目されがちです。

もちろん原価は重要です。

しかし、実際の飲食店では価格だけで仕入れ先を選んでいるわけではありません。

今回お話を伺った飲食店でも、ハラミの価格高騰を受け、複数の代替商品を試していました。

例えば、

 ・メキシコ産
 ・オーストラリア産
 ・他メーカーのハラミ

など、価格を抑えられる商材を実際にメニューへ採用したそうです。

ところが結果は期待したものではありませんでした。

料理長は、

「結局、お客様が満足しなかった。」

と振り返ります。

肉質や食感が変わることでリピート率が下がり、最終的には価格が高くても以前使っていたUSチョイスのハンギングテンダーへ戻したそうです。

これは、多くの飲食店に共通する判断基準ではないでしょうか。

仕入れ価格は重要ですが、それ以上に

 ・お客様の満足度
 ・リピート率
 ・看板商品の品質

を維持することが、長期的には利益につながります。

つまり、

「安い肉を探す」のではなく、「利益が残る肉を探す」ことが、仕入れ担当者の本当の仕事なのです。

ハラミは「利益商品」ではなく「集客商品」になることもある

ハラミは、牛の横隔膜にあたる部位で、分類上はホルモンに属します。

しかし味わいは赤身肉に近く、柔らかさと濃厚な旨味を兼ね備えていることから、焼肉店だけでなく、ステーキ業態やイタリアンでも人気が高い部位です。

今回インタビューした飲食店では、このハラミがランチメニューの主力商品となっていました。

月間の仕入れ額は約200万円。

そのうち8〜9割がハラミ関連というほど、店舗経営を支える重要な商材です。

ここで興味深かったのは、料理長が価格よりも「商品力」を重視していたことです。

価格だけを考えれば、もっと安価な代替品は存在します。

しかし、「このハラミだからお客様が来店する。」

という価値を理解しているため、簡単には切り替えません。

飲食店では、

看板商品を守ることが、結果として利益を守ることにつながる。

これは牛肉仕入れを考えるうえで非常に重要な考え方です。

なぜ価格が上がっても代替肉へ切り替えられないのか

牛肉相場はここ数年で大きく変化しています。

円安による輸入牛価格の上昇、飼料価格の高騰、国内需要の増加などが重なり、ハラミや牛タンをはじめとする人気部位は過去最高水準の相場となっています。

当然、多くの飲食店では

「もっと安い肉はないか」

という検討が始まります。

今回インタビューした飲食店でも、実際に複数の代替商品を試したそうです。

しかし、結果は思うようにはいきませんでした。

理由はシンプルです。

味が変わると、お客様の評価も変わるからです。

料理人は毎日同じ料理を提供しています。

肉質が少し変わるだけでも、

 ・焼き上がり
 ・食感
 ・肉汁
 ・香り

すべてが変わります。

すると常連のお客様ほど違いに気付きます。

「今日はちょっと違うね。」

この一言が積み重なることが、飲食店にとっては最も避けたいリスクです。

だからこそ、価格だけでは仕入れ先を決めません。

安定した品質を継続して届けてくれること。

これこそが、多くの料理長が卸に求める最大の価値でした。

グリムキが支持される理由とは

今回のインタビューで特に印象的だったのが、「グリムキ」という加工方法です。

グリムキとは、余分な脂や筋をあらかじめ取り除き、厨房ですぐに使える状態まで加工された精肉のこと。

一見すると単なる加工サービスにも思えますが、現場では非常に高く評価されています。

理由は3つあります。

① 歩留まりが100%

ブロック肉を厨房で整形すると、筋や余分な脂が必ず発生します。

つまり、仕入れた重量すべてを料理として提供できるわけではありません。

一方、グリムキは歩留まりを考慮した状態で納品されるため、原価計算が非常にシンプルになります。

「何kg仕入れたら、何人前提供できるか。」

これが正確に読めることは、飲食店経営において大きなメリットです。


② 厨房の作業時間を削減できる

肉の整形は想像以上に時間がかかります。

筋を外し、

余分な脂を取り、

形を整え、

重量を揃える。

毎日この作業を行うと、1週間、1か月では大きな人件費になります。

人手不足が続く現在、

「厨房で肉を切らなくていい」

という価値は年々高くなっています。


③ 肉を無駄なく活用できる

興味深かったのは、

取り除いた筋まで料理に活用しているという話でした。

筋は煮込みやソースに利用できるため、決して廃棄物ではありません。

こうした小さな工夫の積み重ねが、利益率を支えています。

グリムキは、

「楽をするための商品」

ではありません。

厨房全体の生産性を高めるための商品なのです。


挽肉選びは「価格」よりも「使いやすさ」

挽肉は価格競争になりやすい商品の一つです。

しかし、現場では価格以上に重視されていたポイントがありました。

それは、

使いやすさです。

例えば、

 ・500gずつ小分けされている
 ・パラパラ冷凍になっている

こうした仕様であれば、必要な分だけ取り出してすぐに仕込みへ入れます。

反対に、

2kgブロックで冷凍された商品は、解凍時間が長く、使い切るまで品質管理も難しくなります。

商品価格だけを見るとブロック品の方が安いケースもあります。

しかし、

厨房のオペレーションまで含めて考えると、小分け商品の方が結果的にコストメリットが高いことも少なくありません。

牛肉の仕入れでは、

「1kgいくらか」ではなく、「厨房でどれだけ効率良く使えるか」まで考えることが重要なのです。

Tボーンは利益商品ではなく「集客商品」

牛肉の仕入れでは、すべての商品に高い利益率を求めるわけではありません。

今回インタビューした飲食店では、Tボーンステーキを看板メニューとして提供しています。

一般的にTボーンは、サーロインとヒレを一度に楽しめる希少部位として知られていますが、仕入れ価格も高く、原価率だけを見れば決して優秀な商品ではありません。

それでも販売を続ける理由を尋ねると、返ってきた答えは印象的でした。

「利益商品ではなく、お店の顔だからです。」

実際に原価率だけで考えれば、もっと利益の残る商品はいくらでもあります。

しかし、Tボーンを目当てに来店するお客様がいる以上、その存在自体が店舗のブランド価値を高めています。

飲食店経営では、

 ・利益を稼ぐ商品
 ・お客様を呼ぶ商品

この2つを分けて考えることが重要です。

すべてのメニューで利益を最大化しようとすると、お店の魅力が失われることもあります。

看板商品があるからこそ、お客様は来店し、他のメニューも注文してくれる。

これは繁盛店ほど理解している考え方でした。

飲食店が精肉卸に求めているのは「価格」だけではない

「もっと安くなりませんか?」

卸として営業をしていると、この言葉を耳にすることは珍しくありません。

しかし、実際に料理長へ話を聞いてみると、本当に重視しているポイントは別にありました。

■安定して同じ品質で届くこと

料理人は毎日同じ味を再現する仕事です。

そのため、同じ部位でも毎回肉質が変わるようでは、火入れや味付けまで調整しなければなりません。

価格よりも、

「毎回同じ品質で届くこと」

を評価する料理長は少なくありません。

■急な欠品が少ないこと

人気部位であるハラミや牛タンは、市場の状況によって欠品することがあります。

もちろん仕方のない場面もありますが、

「前日に急にありません」

と言われることが、飲食店にとっては最も困るケースです。

代替商品の提案や、事前の情報共有があるだけでも、お店側の印象は大きく変わります。

■加工対応が柔軟であること

最近では、人手不足の影響から、

 ・グリムキ
 ・スライス
 ・指定重量カット
 ・真空包装

などの加工ニーズが年々増えています。

厨房での作業を減らせることは、そのまま人件費削減につながるためです。

つまり、

「肉を売る」のではなく、「厨房の課題を解決する」ことが精肉卸の価値になっています。


牛肉仕入れは「厨房オペレーション」まで設計する時代

牛肉の価格だけを比較していると、見落としてしまうことがあります。

例えば、

 ・グリムキで30分作業時間が短縮できる
 ・小分け冷凍でロスが減る
 ・指定重量カットで盛り付けが安定する
 ・真空包装で保存期間が延びる

これらはすべて、帳簿には現れにくいコスト改善です。

1kgあたり100円安い商品を選ぶよりも、

厨房全体の生産性が向上する商品の方が、最終的な利益は大きくなることも珍しくありません。

近年は人件費が上昇し続けています。

だからこそ、

「仕入れ」と「厨房オペレーション」を一体で考えることが、これからの飲食店経営には欠かせません。

まとめ|牛肉仕入れで失敗しないために

今回のインタビューを通して、改めて感じたことがあります。

牛肉仕入れは、単純な価格競争ではありません。

繁盛店ほど、

 ・お客様が満足する品質か
 ・安定供給できるか
 ・厨房の負担を減らせるか
 ・原価だけでなく利益が残るか

という視点で仕入れ先を選んでいます。

実際に現場では、

価格が上がっても品質を優先して同じハラミを使い続けたり、グリムキ加工によって厨房の生産性を高めたり、Tボーンを利益商品ではなく集客商品として位置付けたりと、数字だけでは見えない判断が数多くありました。

牛肉の仕入れは、「どこから買うか」だけではなく、「どのような価値を提供してくれる卸と付き合うか」が重要です。

もし現在の仕入れ先に、

 ・品質のばらつき
 ・価格の高騰
 ・加工対応の不足
 ・人手不足による厨房負担

といった課題を感じているのであれば、一度仕入れ方法を見直してみる価値はあるでしょう。

プロはどこを見て和牛を仕入れているのか?目利きが見る5つのポイント

「A5だから美味しい。」
「黒毛和牛だから間違いない。」

一般のお客様は、このようなイメージを持っているかもしれません。

しかし、実際に産地で牛肉を買い付けているプロは、等級やブランド名だけで仕入れを判断しているわけではありません。

今回インタビューした食肉卸でも、「最終的には人の目利きが品質を決める」と話していました。

同じ和牛であっても、飲食店へ自信を持って提案できる肉と、そうでない肉は明確に存在するそうです。

では、プロは何を見ているのでしょうか。

① 脂の色は「白上がり」になっているか

最も重要なポイントの一つが、脂の色です。

特に今回お話を伺った卸では、和牛の経産牛を仕入れる際も、**「白上がり」**と呼ばれる状態のものだけを厳選しているそうです。

一般的に経産牛は、お産を経験した牛であるため、肥育状態によっては脂が黄色くなりやすい傾向があります。

一方で、再肥育を経て状態が整った上物は、脂が白く美しく仕上がります。

この「白上がり」の状態まで仕上がったものだけを選抜することで、見た目だけでなく、口どけや香りまで大きく変わるといいます。

飲食店で提供した際にも、お客様が「経産牛」と気付くことはほとんどないほど品質が高く、和牛として十分に評価されるレベルの肉質になります。

② 包丁にまとわりつく脂かどうか

もう一つ印象的だったのが、包丁を入れたときの脂の状態です。

プロは肉を切った瞬間の感触も重要な判断材料にしています。

品質の良い和牛は、融点の低い脂を持っているため、包丁を入れると脂がしっとりと刃にまとわりつきます。

逆に、脂の質が良くない肉は、硬く、切ったときの感触もまったく異なります。

この違いは写真だけでは判断できません。

だからこそ、長年産地で肉を見続けてきた目利きの経験が価値になります。

③ サシよりも「肉質のキメ」を見る

和牛というと、美しいサシを思い浮かべる方も多いでしょう。

もちろんサシも重要ですが、プロはそれ以上に肉のキメを見ています。

繊維が細かく揃っているか。

赤身の色に透明感があるか。

ドリップが出ていないか。

こうした細かな違いが、加熱後の食感や歩留まりに大きく影響します。

見た目だけでは分からない部分こそ、プロの目利きが活きるポイントです。

④ 等級だけでは本当の品質は分からない

牛肉にはA3・A4・A5といった等級があります。

しかし、この等級は枝肉全体の評価であり、「この部位がおいしい」ということを保証するものではありません。

実際には、A4でも非常に優れた肉質のものがありますし、A5でも飲食店の用途によっては脂が強すぎるケースもあります。

大切なのは、お店のコンセプトや料理に合った肉を選ぶことです。

だからこそ、等級だけで仕入れを判断するのではなく、実際の肉質を見極めることが重要になります。

⑤ 良い仕入れは「良い目利き」から始まる

飲食店では、仕入れ価格ばかりが注目されがちです。

しかし、本当に利益を生むのは「安い肉」ではありません。

安定した品質で、お客様に満足していただける肉を継続して仕入れること。

そのためには、産地で数多くの牛を見続けてきたプロの目利きが欠かせません。

今回インタビューした卸でも、「和牛の経産牛」という言葉だけで判断するのではなく、白上がりの状態や肉質を一つひとつ確認し、自信を持って提案できるものだけを選んでいるという姿勢が印象的でした。

飲食店にとって本当に価値があるのは、単に「安い肉」を仕入れることではなく、価格・品質・安定供給のバランスが取れた肉を継続的に仕入れられるパートナーと出会うことなのかもしれません。