【業務用×産直】産直ネットワーク設立と産地視察レポート

2025.02.20

【業務用×産直】産直ネットワーク設立と産地視察レポート

鹿児島の生産者ネットワークが始動!産地視察で感じた野菜づくりへの熱意

鹿児島県の自治体で、新たに生産者ネットワークを立ち上げることになり、設立総会で簡単なスピーチをさせていただくため、訪問してきました。

今年に入って数度足を運んでいる鹿児島では、さまざまな作物の圃場や加工場を見学しながら生育状況を確認。生産者の皆さまがどんな工夫をしているか学ぶことができ、とても刺激的な時間でした。


1. 地元の農業を支える主な作物たち         

鹿屋市は路地栽培の盛んな地域として知られ、以下のような野菜が大規模に生産されています。

  • にんじん
  • キャベツ
  • 大根
  • 牛蒡(ごぼう)

生産規模は、1農家で50~70haとかなりの広さ。青果市場向けに出荷している方が約半数、残り半数は加工用に出荷しながら販売先を分散させるなど、リスク分散の工夫をされているのが印象的でした。


2. さまざまな出荷スタイル:加工、コンテナ出荷、機械化 など

視察では、収穫後の処理や販売方法にもいろいろな違いがあることを実感。

  • 300kgコンテナ にまとめて出荷するスタイル
  • 機械化による選別や梱包で効率化を狙うケース
  • 人力を駆使して相場が高騰した際に一気に出荷量を増やすケース

同じ作物でも、販売戦略や投資・人員のかけ方が各生産者によってまちまちで、勉強になることばかりでした。

ベジクルでは飲食店の方々に「葉っぱのついた大根」をお届けするだけでなく写真にあるような「葉切り」の業務用加工大根をご用意しております。1本の大きさにはバラツキがあるので用途は限定されてしまいますが、「大根おろし」や「大根サラダ」「大根つま」などの用途にはとても喜んでいただいております。来シーズンは産直できるように調整中です!


3. 厳しい気象条件が続いた今シーズン

今年は秋の育苗・定植期が猛暑気味。その後、11月には大雨、12月~1月は干ばつ、さらに寒波という過酷な生育環境が重なり、野菜の生育が全体的に遅れがちに。

  • 特にキャベツは年末から相場が高騰し、品薄となりました。
  • 2月18日の訪問時も寒波が襲来し、野菜の生育が鈍化。鹿屋市のように路地栽培が盛んな地域ほど、天候の影響が大きく出やすいと痛感しました。


4. 野菜の肥大促進:あえて手間をかけて成長促進

視察の中で興味深かったのが、大根の肥大を促すために「パスライド」という超繊維不織布を使っている生産者さんの事例。

  • 日中は空気を入れ替えつつ、
  • 夜間は不織布が水分を含んで畑を覆い、気温が2℃ほど高くなる効果がある。
  • マスクの生地のような素材で昼は風通しよく、夜は暖かいという資材

同じ畑でも、パスライドを使っているエリアの大根のほうが太りが良く、厳冬期でも収量アップが期待できるそうです。
2~3年は使えるとのことですが、当然、設置するのにも片付けるにも費用と手間がかかります。
ただ、使用している大根とそうでないものの違いが感覚ですが、Lサイズと2Lサイズくらいの違いがあったのは興味深かったです。

あえて一手間かけてでも大っきくするんだと言っていました。個数は増やせないけど肥大促進させれば重量での納品には有効とのこと。業務用、加工用の出荷だからこそできるとは思いますが、匠だなあと感じます。


5. 春人参(3~5月の端境期)への挑戦

3月以降、にんじんの端境期が到来します。通常はこの時期、徳島産くらいしか出回らず、1箱3000~4000円になることもあるほど相場が高騰するシーズン。

  • 春にんじんの栽培をするには、厳冬期に定植など手間がかかるうえにマルチやトンネルが必要で、敬遠されがち。
  • しかし品薄で値段が高騰しがちな時期に向けて、新たに生産を始められないかと意見交換を実施。
  • もし春人参が安定流通できれば、産地も飲食店も双方にメリットがあると感じました。

産地のみなさんにとって、金額的なメリットを出すだけでなく、たくさん仕入れるという量的なメリットを提示できないと形にするのは難しいと感じました。ベジクルでは1日300~500kgの人参を取り扱ってますが、産地の方からすると「少ないねぇ」と言われる水準。もっと力をつければ産地に新しい風を吹かせられると信じて、飲食店さんの満足度をUPさせていきます!


6. キャベツは3月以降も波乱の予感

年明け以降、キャベツの品薄は一時落ち着いたものの、3月から再び波乱が起こりそうとのこと。

  • 端境期が3~5月でそもそも供給量が減るうえに、
  • 「きんかくびょう」 という病害が拡大中。

鹿屋では5%ほどの被害だそうですが、今の春キャベツの主力産地の千葉・神奈川方面では30%ほどの被害が出ているという話も。

  • 菌核は土壌や強風によって広がる可能性があり、これからの春一番の強風シーズンに警戒が必要。
  • 病害対策として土壌消毒を徹底するなど、コストや手間がかかる面もあるようです。

この手にとっている黒い塊が「菌核」だそう。カビでなく胞子だそうですが、商品として販売できる姿ではないので、恐ろしいですね。案内してもらった5aの畑(5反)で10~30個くらいあったイメージでしょうか。ここまでの困難を乗り越えてきたキャベツたちが収穫前に傷んでしまうのは見ていて辛いです😢


7. 自然のリズムと向き合う、匠の知恵

訪問先の畑で「キャベツの向きが変わる」という興味深いお話も伺いました。

  • 畝が東西向きの場合、春になると太陽の軌道が変化し、日中の日差しをより多く受けようと南方向にキャベツが向くのだとか。
  • 日照時間が10時間を超えれば、多少寒くても作物は成長を進めるらしく、日照・気温・水分のバランスに注意を払うことで収量や品質を確保していく技術の高さに感服しました


8. ヒヨドリ被害にもご用心

今回の鹿屋では暖かい日もあり、ヒヨドリによる食害の話題も上がりました。

  • ヒヨドリは木が多い場所を好み、外葉の栄養価が高いキャベツの葉を食べに来る。
  • ただ、産地全体で見れば被害率は20%もなく、被害が集中する畑が限られるとのこと。
  • やはり自然相手の農業では、動物や鳥の動きにも目を光らせる必要があると再認識しました。

   

ヒヨドリは幸いにも「外側の葉っぱ」をよく食べるようで、肝心な商品自体は殆ど被害がなかったです。ただ、複数の畑を見て回っても特定の場所しか被害がなく、周囲に木が生えていたり「天敵に見つかりにくい安全環境」がある畑が被害に遭っているそうです。


9. まとめ|産地と飲食店を結ぶ新たなネットワークへ

今回の鹿屋市訪問は、生産者ネットワーク設立の総会でお話するための下準備でありながら、実際には私自身が多くを学ぶ場となりました。

  • 多品目かつ広大な面積での栽培ノウハウ
  • 加工用や青果市場出荷など多彩な販売ルート
  • 気象リスクへの対応策から価格高騰をチャンスに変える戦略まで、幅広い視点を得られたのは大きな収穫です。

厳しい気象条件や病害の問題を抱えつつも、新たな工夫や技術で乗り越えようとする生産者の情熱を感じました。

これからは私たちも産地と飲食店の懸け橋となり、消費者も喜ぶ価格と品質で野菜をお届けできるよう、ネットワークづくりに力を入れていきたいと考えています。

産地を見て回るのは本当に勉強になります。鹿児島の鹿屋は北海道のような広大な畑が多いので大規模で機械を使った農業がやりやすい地域ではありますが、東京までの距離が遠く、10t車単位で荷物を送らないと採算合わせるのが難しい地域でもあるんです。ちなみに1車当たり30万円程度の運賃がかかりますので、運賃だけでも30円/kgなんです。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

鹿屋市での生産者ネットワーク設立が、地域の農業と飲食店をより一層盛り上げるきっかけとなるよう、微力ながらサポートしていきたいと思います。